理論株価は何十年も前からある
理論株価。この言葉はよくネットやマネー誌などで見かける。なぜこういうものの需要があるかというと、
1 自分の投資先の合理的株価が分からない
2 不安
これに尽きるんじゃないかと。株式市場では毎日株価が付いているが、ほぼ間違いなく株価は変動するため、自分が買った株価が基準になる事が多い。具体的に言うと買い値よりプラスになれば「自分は良い買い物をした!」と思うし、買い値よりマイナスになれば「自分は高値掴みしたんじゃないか?」と不安になる。こういった傾向は、自分の中で合理的な株価を設定していない人に強いと思う。
他人の設定した理論株価が無駄だと思う理由
日本株に限定しても3,800社以上存在しているわけだが、そもそもこれら全てに共通する株価の査定方法は存在するのか?と思っている。もちろんそんな魔法の方程式があれば銘柄検索は捗るし、あったら良いなと思う気持ちは否定しない。
が
あったら良いとは思いつつも、未だにどこでもドアは開発されていない。願望を現実に無理やり当てはめるのはナンセンスだと思う。また、私が理論株価を信じない理由を以下に。
1 間違いなく理論株価設定者の主観が入る
2 ビジネスモデルが違うのに一括りにするのはありえない
3 会社の事業規模や成長力を加味する事が出来ない
もっと理由を挙げればたくさん出るが、文字の都合もあり割愛しておく。まずは一つ目。
1 間違いなく理論株価設定者の主観が入る
これは分かりやすいが、元々決まった数式が無いために理論株価を作る人の主観が大きく反映されるという事である。例えば私が理論株価の数式を作っても、他の個人投資家が作っても、マネー誌の編集者が作っても、証券会社の人が作っても間違いなく同じものにはならない。逆に言うと作る人が違えば結論が変わるものを、投資基準にして良いのか?という疑問が起きる。
2 ビジネスモデルが違うのに一括りにするのはありえない
例えば重厚長大産業で財務も良く、低成長でも黒字経営だったら基本的に理論株価は安いという判定を出されがちだろう。しかし、同業種にライバル企業がいない会社が先行投資で減益予想を出している場合、理論株価では高いと判定されがちになる。どちらに伸びしろがあるかは一目瞭然なのだが、理論株価ベースで考えると投資先は前者になる。これはグロース投資家としてはあり得ない選択肢となる。
3 会社の事業規模や成長力を加味する事が出来ない
前項と重複する部分があるが、毎年黒字だけど利益成長していない低PERの老舗会社と、上場したてで先行投資フェーズにある伸び盛りの会社。どちらに投資する方法もありなわけだが、画一的な理論株価にとらわれると投資機会を失う可能性が高い。「じゃあ、グロースとバリューで計算方法を変えれば良くね?」と言われるかもしれないが、3,800社以上ある企業群の中からバリューとグロースで分けるのも手間がかかるし、グロース企業と認定されたものの中でも、更にビジネスモデルや会社の中身も変わって来る。それらを加味すると、合理的な理論株価ってなあに?という気持ちになって来る。
もし私が理論株価を信じていたら・・・
ここで私自身の実例を。私がフォースタートアップスを買った当初、株価は1,200~1,400円近辺で推移し、全く鳴かず飛ばずで売れない新人歌手みたいな低空飛行だった。期待していた通期業績予想も振るわず、長期戦を覚悟する展開となった。私自身購入した株価に関しての不安はなかったものの、第三者が評価したらいくらぐらいの株価になるのだろう?と思い、興味本位からとある理論株価のサイトで算定をしてもらった。すると、
理論株価 784円 (ぐはっ!)
との結果が。正直おったまげた。この理論株価を基準に考えれば、私は超絶高値掴みをしたアホな投資家となる。ちなみに本日時点でのフォースタートアップスの株価はこちら。

もし私がこの理論株価を信じてポジションの再構築をしていたら・・・。投資家人生に関わる大失態であった事は間違いない。こういった実例からも、株価の合理的算定は自分でする事が重要である。安易に他人の作った基準に乗っかる事はやめよう。