株を始めて数ヶ月、あるいは一年ぐらいたつと株価が大きく変動するタイミングが何となく見えてくると思う。それは、今週みたいな市場全体の急落時や、決算直後の株価がそれにあたる。市場の急落は誰にも予測ができないが、決算の日程というのは大体決まっている。なので、株価の変動を利用して効率の良い株式投資を考えるようになると、
決算またぎ
この文字が頭をよぎってくる様になる。理由は簡単。好決算やサプライズがあれば株価はストップ高に張り付き、一日で20%の値幅をゲットすることができるから。こういう現象を目の当たりにすると
決算またぎして当てた方が効率いいんじゃね?
と誰しもが考えるようになる。私もその一人だった。それに、ストップ高を引いた時の高揚感って、株の醍醐味だからね。しかし、長いこと株をやるようになると、この決算またぎが本当にプラスになりやすい投資なのかどうなのかを考えるようになった。ここからは私自身の体験をもとに私見を述べたいと思う。
まず、決算またぎを考えるにあたって条件を設定してみた。
・資金100万円で、手数料と税金は考えない。
・ストップ高を一回引いたら+20%。ストップ安を一回引いたら-20%。
・三ヶ月の四半期決算ごとに決算またぎを実施する。
以上の条件。これで資金を短期間で二倍にするという目的で考えてみる。
(単位は万円)

ものすごく簡単に言うと、全力で資金を投入してストップ高を連続で4回引ければ資金は倍になるのである。
たった4回
これ、夢があるじゃないですかお客さん!ここだけ見てるとものすごく効率が良い投資方法に思えてくるわけだが、では、これを実際に成功させるための条件を可視化してみよう。
1 資金を全額投じる
2 ストップ高になる株を当てる
箇条書きにするとたったこれだけである。そう、二つしかない。文章だけで見るとものすごく簡単だ。では、実際にこれを実行しようとした場合どうなるか。
1 資金を全額投じる
もし株につぎ込むお金が一万円だったら、そんなに躊躇することはないと思うが、投資を志す人たちは自分の人生を変えたいレベルでお金が欲しいわけだ。となると、自分の生活に影響がない程度の元本を注いで決算を当てたところで何の喜びも感じないだろう。
そう考えると自分が持っている資金の大部分を投じることになる。だが、当然株は増えもすれば減ったりもするし、そのことを考えると、資金を全額投じるということ自体が大きなハードルになる。
2 ストップ高になる株を当てる
簡単にストップ高を引くと言うが、株価がストップ高になるには、一般的に市場の予想と相当の乖離がなければストップ高にはならない。あなたの予想が他の大多数の人よりも相当程度優れていて、かつ、地合の影響や諸々の条件をクリアした上で勝ち取れるのがストップ高だと考えて間違いない。簡単にストップ高が予想出来るのなら事前にみんな買ってるわけで、その考えに優位性は生まれない。
つまり、大多数が思いつくようなアイデアでは出し抜くことは出来ないのである。
ここまで来るとちょっと風向きが変わってくることに気がつく。4回当てるということだけにフォーカスするとすごく簡単なように見えるが、いざ自分の種銭を注ぎ込み、なおかつストップ高を引き続けるという行為が簡単ではないということが分かって頂けるだろうか。そして、4回当てた場合は資金が倍になるが、もしそうじゃなかった場合どうなるか検証してみる。
パターンA
これを見るとわかるが、一回目にストップ高を引いても次にストップ安を引けば、その時点で元本は割れる。その後にストップ高を引いてプラスに浮上した後、ストップ安を引けば元本を割る。
パターンB

次のパターンは、最初にストップ安を引いて元本割れし意気消沈していたが、その後ストップ高を二連続で引いて、
自分は天才じゃないか?\(^o^)/
と思った後に、またストップ安を引く。これでも元本は割れる。
結局、
ストップ高二回、ストップ安二回でも元本は割れてしまうのだ。
こうして見ると、ストップ高を当て続けるということが大前提となり、非常に実現性に乏しくなることが分かってくる。また、以下のような問題も生じてくる。
一度決算を外すと全額入れるのが怖くなる
好決算を全て引き当てるのは不可能だ。そう考えるとある一定の確率で決算を外すわけだが、その外した時のダメージというのが、恐怖心という心理的負荷になって襲い掛かってくる。「今度外したらどうしよう?めっちゃお金減るわ~。自信ないからロット下げよう」これが普通の人の心理である。
また、資金管理の面でも、毎回全力で注ぎ込むというのは危険だという事が理解できる。そうなると、資金を半分にして恐怖心を抑えようとした場合、当てた時のリターンに大きく影響が出る。仮に資金を半分にして50万円でストップ高を引いても、60万円にしかならない。当然資金は減りにくくなるが、当てた時のリターンも減るので、そもそも決算またぎする意味があるのか?という疑問が出てくる。
毎回ストップ高ストップ安になるわけでもない
これも当たり前だが、仮に決算を当てたところで毎回ストップ高になるわけではない。市場予想よりはちょっと良かったけれど、5%とか8%とかそういう上げで終わってしまう場合も多々ある。
そうなると、資金を全力で傾けて賭けに勝っても、リターンが低いと長く続けてる間に不利になっていく。これだけ客観的に見て、決算またぎを続けることのハードルが高いということが分かった上でも、なぜ人は短期の決算またぎをしようとするのか?それは、
すぐにお金を増やしたいから
この一点だけである。また、その他の効用としては、ストップ高を引けば自分の中での自信も深まるし、SNS をやってれば第三者に対しての優越感に浸れる。すげーすげーと言ってもらえる。
こんなところだろうか。しかし現実問題、決算またぎをずっと続けて、名だたる投資家になった人を私は知らない。なぜなら決算を当て続けるということは、プロ野球でいう5割以上の打率のバッターでないといけないということで、それは現実的に不可能だということは、理解できるだろう。しかし、
目の前のストップ高には、その理解を打ち消してしまう魔力がある。
もちろん、この世界はいろんな人がいるので、決算またぎのみで生活ができてる人もいるかもしれない。だが、私自身は決算またぎを繰り返すということに優位性を見出せなかったのと、実際に自分には不向きだったことを理解したので、短期的な決算またぎというのはしていない。なので、私自身は、
四半期ごとの決算またぎはコイントス
だと結論付けている。くれぐれも勘違いしないでほしいが、私が言ってるのは、四半期ごとに株価の変動を利用した決算またぎはコイントスだと言っているだけだ。長期投資家が普通に決算をまたぐのとは違うということを理解していただきたい。
こっ、この記事は、決算またぎ大好きな私のことですね。今の地合いでは割安株が多いので結構勝負しちゃってます。それでもリスクは大きいと思いますけどね。